緊急時避難所設営マニュアル

台風8号の影響で、全国的に激しい雨予報の地域が多くなっています。
避難勧告が出る地域も出ています。

状況によっては、学校が避難所に指定されることもあります。
以下の内容は、10年前の水害、地震で避難所運営にかかわった経験から、
私なりに避難所設営の手順や留意点をまとめたものです。

地震を想定した部分も多いので、
台風や水害には該当しない部分もありますが、
何かの参考にはなるかと思います。

ご一読ください。

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避難所設営マニュアル

以下の状況が発生したときの対応マニュアルです。
市町村のマニュアルが無い場合にお使いください。

→災害により避難準備情報以上の発令がある、あるいは地域が災害の被害を受ける。
→地域教育委員会等から「避難所を開設する」指示が出る。
※行政職員が市役所等から学校に向かってくるが、災害時なのでスムーズに到着しない。
※防災無線等で避難準備情報等が発令されたことが地域に周知されている。

 

① 避難してくる人たち(以下、避難者)の動線を決める。

どの入り口から入ってもらって、どこに靴や傘をおいて、どこの部屋に入ってもらうのかを決めます(多くの場合は、体育館最寄りの入り口から入れて、体育館へ誘導)。靴置きのブルーシートを敷いたり、避難場所となる部屋にゴザを敷いたりします。
同時に、立ち入り禁止箇所を決め、表示をします。子どもの私物や貴重品がある区域に勝手に入られると困りますし、避難者が限定したエリアにいるようにしないと、情報伝達が困難になります。

 

①’避難者名簿の用紙を準備する。

動線を決めると同時に、避難者の住所、名前(可能なら性別、年齢)を書いてもらう用紙を準備します。大きな災害の場合、住民の安否確認、特にお年寄りの避難状況の確認が必要になります。
また、行政・親族からの問い合わせもあります。「○○町の△△というおばあちゃんは避難しているか」などの問い合わせに答えられるようにしておく必要があります。
名簿は、可能なら町内(行政区や子ども会区分)ごとに書いてもらうと後々便利です。
ここで、介護が必要な避難者や点滴、酸素ボンベの携行などの医療措置を必要とする避難者、乳幼児の人数、ペットの帯同も確認します。後での援助物資の要請や避難環境の整備に必要になります。

 

② トイレの環境の確認、整備を行う。

水道が止まっていないか、トイレットペーパーはあるかを確認します。また、トイレ用スリッパを用意します。水道が止まっている場合、状況に応じた使用制限を設けることが必要になります。
衛生的な環境を確保する上で、トイレの管理は絶対です。基本的に我慢できないものですから、どうしようも無い場合の対応も考えます。プールにトイレがある場合は、そこを大便用に解放し、バケツでプールの水を汲んで流すという方法もあります。

 

③ 水を確保する、お湯を沸かす。

清潔な水を確保します。学校の場合、給水塔に水が貯めてあることが多いと思うので、家庭科室のやかんや鍋に水を確保します。これは、飲み水やけがの対応用の水です。
安全を確保しながら、お湯を沸かします。風水害の時はガスが使えると思いますが、地震の時はガスが止まっている事態も考えられます。理科室や家庭科室にある道具をうまく利用して、少量ずつでいいのでお湯を沸かし、ポットに入れておきます。粉ミルクや介護など、お湯があるといい場面は多々あります。地震の場合は余震に十分に注意します。

 

③’授乳スペース、おむつ替えスペース(乳幼児用)をつくる

衝立やパテーション、移動黒板の下部分を覆ったものなどを組み合わせて授乳スペースをつくります。避難者に乳幼児が何人いるかにもよりますが、複数の区画に分かれていた方がいいでしょう。
併せて、子どもを寝かせておむつを替えられるスペースも用意します。とりあえず、ただ床に寝かせて交換するよりも衛生的であればいいと思います。おむつを捨てる場所を指定し、そこにゴミ袋を用意しておきます。結構臭いが出るので、居住区画から離れていた方がいいでしょう。
お年寄りのおむつ替えについては、保健室を利用してもらうか、別室を用意したほうがプライバシー保護の観点からもトラブルを避けられます。

 

④ 段ボールを集める

学校中にある段ボールを集めます。教室で荷物入れに使っているものでも、よほど汚れていたり埃まみれになっていたりしない限りは提供してもらいます。
段ボールは、組み立てて区画を区切ったり、床に敷いて緩衝兼防寒に使ったりと、様々な場面で活用できます。集まった段ボールは、横になっている時間が長い高齢者などを優先して配ります。

 

⑤ 指揮・判断系統を決める。情報共有手段を決める

避難所運営の場面では、学校職員以外の行政職員も学校にやってきて、連携しての作業が必要になります。ですから、通常の校長先生をトップとするいつもの指揮、判断系統では不具合が生じることがあります。最終的な判断は誰がするのか。どういう組織で避難所を動かすのか。暫定で決めておく必要があります。
非常時において、複数の判断が一つの避難所内にあることはトラブル発生の最大の原因となります。最終判断は誰がするのか(施設設備の使い方は校長先生、避難所経営の方針は行政職員など)をはっきりさせます。
同時に職員室、または本部になる場所に移動黒板を持ち込む、模造紙を貼るなどして、職員が共通理解すべき事項を書き出せるようにします。自治体からの指示や避難者からの問い合わせ・要望に対する対応の仕方を随時書き出していきます。ここに書かれたことを基準として、避難所運営や問い合わせ、要望に対する対応を行います。

 

⑥ 避難スペースにテレビやラジオを持ち込みます。

体育館でテレビを使うことが可能なら、避難者に見やすい位置に設置し、災害情報を報道しているチャンネルを映しておきます。テレビがダメなら、ラジオを持ち込みます。放送設備が使える場合は、避難所内に低度な音量で災害情報を流しておきます。放送設備がダメでも、避難者が聞きやすいように環境を整えます。
災害時、避難者がまず一番ほしいのは情報です。できる限り情報を提供するようにします。(今は携帯やスマホでも情報が得られますが、充電がしにくい状況であるはずなので、極力電池を温存するようにアナウンスします。ガセネタの流布を防ぐ効果もあります。)

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