取り急ぎ、若い先生や教育実習生の先生向けの教材研究のお話から。
一昔前と違って、ネットで検索すれば教材分析や指導案がたくさん手に入るようになりました。
SENSEI NOTE https://senseinote.com/ や
EDUPEDIA http://edupedia.jp/ など、
教員向けの情報を集積するサービスも展開され始めていますし、
私の前任校である新潟大学教育学部附属新潟小学校
http://www.fuzoku-niigata.jp/ のように、職員の全指導案を公開する学校もあります。
ちょっとググれば、手軽に授業が手に入る
そう錯覚してしまいそうな時代になりました。とても素敵なことです。
この環境を大いに活用して、教材研究、授業づくりを進めるべきだと思います。
しかし、このネット環境には、大きくて深い落とし穴も存在しています。
たくさんの情報を簡単に手に入れられるようになった代わりに、
誰もが簡単に情報を発信できるようにもなっている、ということです。
情報発信が書籍や雑誌中心だった時代、
原稿は必ず編著者や編修者の手元を経由して公開されていました。
その際には、原稿依頼の段階で執筆者が絞り込まれ、
さらに校正の段階で修正されたり、あるいは没になったりという、
厳しいプロセスを経て原稿が公になっていました。
教育関係書籍の編修者の方は、膨大な量の原稿を読んでいます。
平均的な教員が1年間に読む教育研究の書籍より、絶対に多く読んでいます。
そういうお仕事だから、といえばそれまでですが、ただ文字を追うのではなく、
内容をしっかりと読み込みながら、編修のお仕事をされています。
そういうプロフェッショナルの眼鏡に適うものが、本として流通しているわけです。
しかし、このブログも含めて、ネットはそうではない。
誰もが自由に情報を発信できます。それはまさに玉石混淆。
検索エンジンで上位に出てくるからといって、
その内容が必ずしも優れているという保障はありません。
試しに、「国語 指導案 カレーライス」でググってください。
私の附属新潟小時代の指導案がトップで出てくるはずです。
この指導案は、9月の複式授業の研究会での成果発表に向けて、
何とか成果を出すために、ヒーヒー言いながら書いた指導案です。
授業日は7月20日となっています。
記憶が確かならば、この前後の私のスケジュールは、
12日~14日 5年生佐渡修学旅行引率
15日 登校日、6年生午前放課
16日~19日 6年生立山登山引率
20日 研究授業
21日 1学期終業式 でした。
ここに通知表や会計処理などを並行しつつ書いた指導案ですから、
今見返しても相当雑な指導案になってしまっています。
事実、授業もグダグダで、1時間扱いの指導案で連続3時間の授業をしました。
それでも、指導案で想定した子どもの思考を生み出すことはできませんでした。
いいわけがましくなりましたが、
つまり、「カレーライス」を教材とした指導案を探して、
ググってトップに出てくる指導案は駄作 ということです。
こういう例は、他にもたくさんあります。
そもそも、指導案というのは、担任が自学級の子どもの実態に即して、
ねらいを立て、そこに至るための方策を考え、記述したものです。
他所様の子どものためのもの なのです。
それが、そのままあなたの学級にフィットするなんてことはあり得ないのです。
ですから、私は若い先生や実習生には次のようにアドバイスしています。
・ネットを活用した授業づくりは大いにやるべし。
・読めば読んだだけ、力が付く。勉強になる。
・ただし、最低でもネットの指導案3本+教師用指導書を読め。
教師用指導書に書かれていることは、
できるだけどの学級でも通用するように練られた教材研究と指導の方策 です。
ですから、これが軸。
そして、複数の指導案。
指導書と指導案複数本で重複している教材研究やねらいは、
その単元、教材にマッチしていると考えていいでしょう。
しかし、他と全く違うことが書いてあるなら、それを援用することは避けるべきです。
その上で、自分の授業に適合しそうなエッセンスを取り出し、授業を組み立てる。
面倒に感じるかもしれませんが、ゼロから出発するよりもずっと楽。